あの小さな青い鳥だって 虹を超えていったわ


わたしにできないはずはないもの


わたしにだって できるわ





「Over The Rainbow」













僕って、何…?











まったく新しい生が始まる














少し、本章に入る前に。

下の文章は、2008年の当時に書いたものです。いま、読み返しても、とてもうれしく頷くのです。



愛は求めるものではなく ここに表現するもの

奇跡は待つものではなく いま起こっていることに気づくもの

そして わたしたちが生まれてきた理由

それは 歓びであること



あるがままに 自由自在に



わたしの大好きな曲、ルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」には、そんな思いが込められているような気がします。ライブ盤の歌い出しで、彼はこう語っています。

「ときどき若い連中にこう言われる。 なぁ、おやじさんよ。この世界のどこが素晴らしいんだ? 戦争が頻発し、飢餓に苦しむ人たちがいて、世界中のあちこちで環境汚染が問題になっている。とても素晴らしき世界とは思えないね。でも、ちょっとおやじの話も聞いてくれ。世界が悪いんじゃない。 素晴らしき世界は実現するさ。大事なのは、愛さ。みんながもっと自分を愛せば(*「愛で満たせば」)、問題は解決するさ。そうなれば最高だね。だからオレはこの歌を歌うんだ」



愛を知る。本当の、愛。それは、なんて大事なことだったんでしょうね。












 家に帰りたい




映画「オズの魔法使い」は知ってるでしょうか。突然、大きな竜巻に飲まれ、見知らぬ国に辿り着いた主人公のドロシー(と、愛犬のトト)。

「家に帰りたい」と、魔法の国・オズを旅します。

そこで出会うのが、「知恵のないふりをしている、かかし」、「勇気のないふりをしている、ライオン」、「ハートがないふりをしている、ブリキのきこり」。さまざまな困難に遭いながら、一緒に旅をしながら、ドロシーたちが成長していく物語です。


虹の向こうの どこか空高く
子守歌で 聞いた国がある


虹の向こうの空は青くて
信じた夢は すべて現実になるの


いつか星に 願ったの
目覚めると わたしは雲を見下ろしてる


すべての悩みは レモンの雫になって
屋根の上に 溶けて落ちていくの
わたしは そこに行くよ


あの小さな青い鳥だって 虹を超えていったわ
わたしにできないはずはないもの


わたしにだって できるわ










 はじまり




あるとき 

「僕は 誰?」

って質問した途端 みんなバラバラになったんだ

それぞれに ひとつのところから旅立って行ったんだ



そのうち 宇宙で くるくる回転したり すいすい泳いだり いろんなことして

僕 みんなと ただ遊んでたんだ



だけど いつしか 遊びがエスカレートして

たたいたり ひねったり エネルギーをぶつけ合ったり 奪い合ったり…

そんなことが はじまったんだ



ママが「やめなさい」って言っても

僕たち もっとやり始めたんだ

そうすれば また元のように みんな一緒になれるかもしれないなんて



ホント 考えること やることが 子供だよね

やっちゃダメって言われることに 見事に魅力を感じてしまうっていうかね



ある日 地球に行く計画が もちあがったんだ

僕たちが創った 「ちきゅう」ってとこに行って

そこで もう一度 ちゃんと

「僕は 誰?」

その答えを体現するんだって 



それは いままでにない まったく新しい状態なんだって

僕は 思わず 「行くよ」って言ってしまった気がする 思わずね



僕は なんだか暗い 暗い 穴に落ちて行ったんだ

くるくる回転しながら 暗い 暗い 穴に

どんどん どんどん どんどん 落ちて 落ちて 落ちて



気づいたら 「にんげん」になってたんだ



だけど… なんだか大事なことを 忘れてる気がしたんだ

くるくる回りすぎた せいかな



僕は なぜここに来たのかも 忘れてしまってる…

僕は 何を忘れたんだろう…

考えても 考えても 分からないんだ

それに とっても窮屈なんだ

なんだか 窮屈なんだ…

重いんだ なんだか重いんだ…

なんだか すべてが逆さまになってしまった気がするんだ…



僕は 「何か大事なこと」を すっかり忘れて

生き始めた この「ちきゅう」って場所で

「にんげん」ってやつをね



だけどね 生きてる感じがしないんだ

僕 どうして ここにいるの?

ねぇ どうして ここで生きてるの?

神様 教えてください

自分で言っておきながら 「神様って 誰よ?」って思ったりもしたんだ



天にまします 我らが神よ

どうして 私は このような

狂った地上に 堕ちてしまったのでしょうか

私は あちこちで騒動を起こし

いつしか ちんぴら天使と 化してしまいました

おお 神よ

哀れな私に 救いの手を!



そんなふうに思ってた僕の ちょっとした話を 書き留めておこうと思うんだ

もしかしたらキミは ちんぴら天使 なのかもしれないし だったのかもしれないね












 石を投げたんだ




天使はね、笑わないんだ。

なぜかって? 人間の経験をしたことがないから。 人間として笑うってどういうことだかも分かんない。当然だよ。人間として泣いたこともないんだから。

降りてきた天使は、いろんな経験をするんだ。人間になってね。男になってね、女になってね。悲しいことも、つらいことも、恨み、ねたみ、嫉妬、ありとあらゆる人間の経験をね。

一生懸命、生きるんだ。必死になって、生きるんだ。 どうしてこんな気持ちになるんだろう?って、こんなに頑張ってるのにって。

僕はしあわせになれないのかな。いっぱい、いっぱい、頑張ったよ。

だけど。しあわせって、どういうことなんだろう。すごく、いい人になることかな。すごく、立派な人になることかな。すごく、優しい人になることかな。誰からも褒められる人になることなのかな…。

そしたら、僕はしあわせなんだろうか。

苦しんだり、どうにかしようとしてもがいてみたり、感情を抑え込んでみたり、ああでもない、こうでもないって、いろんなことやってみたけど、分からないよ。

でもね、あるとき。そんな、あっちに行ったり、こっちに行ったりの遊びにも疲れるときがくるんだ。疲れ果てんだ。

まるで何かのスイッチが切れるように。

(あ…、僕は今回、こんなことをしにきたんじゃなかった…?)ってね。




ぽちゃーん 水面に 石を投げたんだ

まだ波打ってるよ

ざわざわ ざわざわ ざわざわ…















 「私」の現実のなかで




「魂の抜け殻」

そんな言葉を聞いたことがある。ある友達は「きっと、人ってカラッポなんだよ。だから、その空洞を何かで埋めたいって思っちゃうんだよね」、そんなことをポツンとつぶやいたことがあった。

でも、何を埋めればいいですか? 

何を埋めれば、永遠に満たされますか? 

神様、どうか教えてください。神様じゃなくてもいいですよ。

でも、どうか嘘じゃなく、気休めじゃなく、本当の、本当のこと、微塵も嘘じゃないものを教えてください。お願いします。

きっと、きっと、お願いしますね。



そんなふうに願ったことがあった。もっと、もっと、強烈な渇望だった気もする。



小さい頃、とてもよく寝る子だったと母から聞いた。手がかからない子供だった、と。

ずっと寝ていたらしい。寝る、食べる、排泄する。あとは少し遊んで、寝る。言葉を話すのも遅く、3歳を過ぎて、ようやく少しずつ話し始めた。

小さい頃の写真を見ると、自分でいうのもなんだけど、まるで天使だと思う。ほんとに、かわいいんだ。これから、いろんなことを経験するんだけど、無邪気に笑ってる。キミが苦しみの中にいるとき、未来の僕はこうしてるよって伝えたい気がする。

きっと、これを書いてるのは、そういうこと「だった」のかもしれない。あ、でも。キミはまだ文字が読めなかったね。だけど感じて欲しい。下を向かずに、ただ息をして、安らかに息をして。僕を。






10歳まで、キミは何不自由のない暮らしをするんだ。いろんなことを両親から与えてもらう。キミは比較的、独りで遊ぶことを好むだろう。キミは運動神経がいいから、家でも逆立ちをしたり、とび跳ねたり、縄跳びをしたり。自転車で土手の坂道を猛スピードで駆け降りたり、両手離しで運転したり、石を水に投げて飛ばすのが好きだね。

ああ、それから読書も好きだ。小さい頃からキミの書棚には、たくさんの本が埋まっていたね。とくに「小公子」や「飛ぶ船」って本は、お気に入りだ。お気に入りの場所で、陽だまりの中で読書をする。僕も、僕の仲間も一緒にね。

それから、自然や動物は最高の友人になる。彼らは純粋だからね。特に、猫はキミをとても安心させてくれるよ。猫は未来を現す動物だから。いまキミと一緒にいる猫は、ちょっと特別だよ。もう知ってるだろう? 彼のことは。

人間の世界で出会う、キミのお母さんになる人はとても頑張り屋さんで、チャキチャキしてる。お父さんは、とてもおっとりしてて、寡黙な人だよ。2人とも、とーってもお洒落なんだ。特にお父さんは、佇まいからして洒落てる。だけど、正直言って正反対の性格なんだ。

お母さんは、お父さんが何も言わないから、いつもイライラしてんだ。お父さんは口論になると黙ってしまうからね。お父さんは子育てに積極的じゃないんだ。子供ってのが苦手なんだろうね。だけど、キミのことは、すごくかわいがってくれるよ。

なぜって? お父さんは、キミのために…、いいや。これ以上は、いまは言わないよ。あとはキミが本当の眼で見られるようになれば、すべてのことが分かる日がくる。


見た目に、表面的なことに惑わされないで欲しい。


だけど、そんなこともキミにとっては貴重な経験になっていく。キミがまだ幼稚園に通っている頃だろうか。お昼寝をしてたね。
起きたとき、壁一面に多くの目を見ただろう? 驚いて、怖がっていたね。あれは僕らの仲間なんだ。人間になるにつれて、僕らの世界のことも忘れてしまったから。でも、僕はどんなキミも見守ってる。どんなときも。

10歳のとき、キミは環境が一変する経験をするだろう。住む家も変わる。飼っていた動物たちとも、さよならをすることになる。そして、お父さんもいなくなる。離れ離れになるんだ。そのときから、性格が変わるだろう。新たな性格の誕生だ。

それまではボーッとした子供だけど、そこから「強い」キミに変化してくんだ。いろんな闇と言われることを経験する。キミは強くなろうとするから。悲しいと感じることは悪いと判断してしまうんだ。泣くことは弱いってね。弱いやつが許せなくなる。人に弱みを見せなくなる。いつしか悲しみを怒りに変えていく。頑張る原動力にするためにね。勉強もスポーツも、キミは頑張り続ける。

競争(闇)に打ち勝つことが、唯一の目的になってく。キミが選んだ時代ってのは、そういう時代でもあったんだ。キミはそれを経験したかったんだよ。

社会人になっても、それは続く。

ちょうど2000年頃、キミにとってはつらい日々が始まる。戦いに疲れ果てて、「死にたい」と思うようになるだろう。生きてるのか、死んでるのか分からないような日々を過ごす。それは、まるで幼虫がサナギに変わるようなもんなんだ。




「生きる」ことについて考え始めるのも10歳の頃からだね。「死」についても考え始める。キミは探し続ける。2000年を境に、もっともっと真剣に探し始めるだろう。

ポジティブシンキング、占い、心理、前世療法、ヒーリング、クリスタル…、いろんなことをやってみるだろう。人間や運命ってものを研究するためにね。キミはクリスタルから何か特別なものを感じるだろう。とくに透明なものをキミは好む。ある種のクリスタルをね。

そのどれもが役に立つ。だけど、どれも核心を得るものじゃないってことに気づくことになるんだけど。

それから、キミにとって成功や富、名誉は付加価値でしかない、それは本当の目的じゃないことにもね。

人間としての楽しみが魅力的じゃなくなるときがくる。実際、ずっとキミはそうだったんだけど。「人間の楽しい」よりも、もっと違う「楽しい」があるってこと、すでに知って生まれてきているから。





眠そうな、まだ小さな、小さなキミ。そうだね、今日はこれくらいにして、おやすみ、おやすみ。夢で逢おうね。








投げた石 

水の中に沈んでくよ

ぷくぷくぷく…




























 ある夢




今日は何を話そうか。僕は、もう大人になったキミに話しかけてる。人間的には、大人の身体をしてるね。もうすぐ僕と出会うことになるよ。

キミはよく夢を覚えているね。夢は、人間として現実だと思ってる景色と違わないんだけど。いま、キミはまだ、ほとんど人間だから、人間でいるときは、そのことが本当には理解できないね。

人間を卒業しようとしてるけど、まだ、ほとんど人間なんだ。

いま、キミはとてもつらいときだね。なんだか、時が止まって、何もかもが動かない。キミは立ち止った。舞台で踊っていた機械仕掛けの踊り子が、突然、踊るのを止めたみたいに。 一生懸命、踊っていたのに、踊らされていたのに、踊れなくなってしまったね。


(一歩も足が動かないみたいなんだ…。なんだか、おかしいんだ…。もう頑張れないんだ…)


それでも、キミはまだ頑張れないことに罪悪感をもってるね。まだ頑張ろうとしてるんだ。


無理もないさ。それが人間としての生き方だから。何かに向かって、周囲から無意識に取り入れた目的に従って生きるのが人間なんだから。それは本当にキミが選んだことじゃないのにね。そうやって生きるために生まれてきたわけじゃない。

もう、キミはその生き方をすることを選んでいないんだ。なのに、まだそれが分からないんだ。

あまりにも無理にいろんなことを抑えて生きてきたね。どれほど、本当のキミだったことがあったろうか。罪悪感を、自己不信を、いろんな闇だと思い込んだものを抱えて。いろんな闇から目を背け、闇の真の姿を見ることもせずに。恐れて、見ようともせずに。戦うことが精一杯だった。そして、人間が闇だと決めつけたものを、全部、自分のものにしてしまったんだ。まるで荷物をいっぱい背負いこんでしまったかのようにね。

キミは自分は人間だと思い込んでしまってるからね。運命やほかの目に見えない存在、なんだかわけの分からない神に支配されてる、ちっぽけで無力で愚かな人間だってね。しかも、女だとさえ、本気で思い込んでいる。

それほどに、人間の世界へと、人間の想念の世界に染まって、がんじがらめになってしまった。僕の声さえ、僕さえ、もう感じられないくらいに。




キミは泣くことも忘れてしまったね。



(僕は、もう死んだほうがいいのかな…。死にたいよ、疲れたよ‥。頑張れない僕は、もうダメなんだ…。何も楽しくないよ…)

本当にそうしたいのかい?

(うん…。もう生きてる意味も、価値もないんだ…)

なら、そうしてあげよう。いますぐキミの願いをかなえてあげるさ。さあ、夢の世界へ!



― 夢のまた夢 ―

買い物に出かけた帰り。まだ少し買い物をするという母と別れ、いつもなら電車を使うのに、なぜかバスに乗った。

バスの中には、高校生の女の子、サラリーマンのおじさん、小学生くらいの女の子…、4、5人しか乗っていなかった。平日の昼間だから空いているのかもしれないと思いながら、僕は、車両の中央辺りの席に座り、車窓の景色を眺めていた。

いつしか、周囲は花畑にような景色が広がっていた。見たことがないような景色だ。間違えて乗ってしまったのかもしれない。少し不安になりながら、運転手さんに、

「すみません、降ろしてもらえますか?」

けれども。運転手さんは、聞こえない様子。もう一度、同じことを言ってみたけど、まったく聞き入れてくれない。それどころか、うすら笑いを浮かべている。

このまま行けば死ぬ、そうなぜか直感した。僕は、必死になって、

「降ろしてください!」。そう何度か、さらに大きな声で言ってみた。けれども、運転手さんの反応は同じだった。

僕は、思わず、叫んだ。

「降ろしてください! まだ死にたくない! まだ死にたくない!!!!! 僕は、まだ死にたくない!!!!!」

― 夢のまた夢の終わり ―



目が覚めた。そのときの僕の寝姿は、ベッドの上にまっすぐ寝て、胸の上できちんと手を組んでいた。まるで棺桶にでも入っているかのように。

(キミがそうしたいと言ったから、そうしてあげようと思って )

そんな言葉を聞いた気がしたんだ。いや、ハッキリと聞いたんだ。何よりも驚いたのは、僕が「死にたくない!」と叫んでいたことだった。僕は、死にたくなかったんだ…、まだ死にたくなかったんだ…。



僕は生きたかったんだ…。



そんなことを、呆然としながら考えていた。









そう、キミは生きることを望んでいる、それも本当に生きることをね。

「だけど、生きるって、どういうことだか分からないよ、分からないんだ…」

本当の意味で分かるときがくる。キミは、本当に生きることを、その手に、その体で、その生命すべてで、つかむときがくる。それをキミが選ぶならば。キミは生きることを決めるんだね?

「僕は生きたい。死んだように生きるのは、もうたくさんだ! 生きたいんだ! 本当に生きたいんだ、生きてみたいんだ…!!」

なら、もうひとつの夢にキミを招待しよう。

























 僕って何?




もうひとつの夢の話に行く前に。今夜は、未来の僕からじゃなく、当時の僕、どう呼んでいいのか分からないけど、そのときの僕から話をしたいんだ。よかったら、つまらない話かもしれないけど、付き合ってほしい。

いま、僕は泣いてる。涙は流していない。だけど、泣いてるんだ。

さみしんだ、とてつもなく。とてつもなく、孤独なんだ。

僕の両親は、僕が10歳のころ、家業がうまくいかなくなったと同時に、別居した。僕と兄は母のもとで暮らすことになった。父は、どこかに行った。新しい家に引っ越したとき、母がひとりで部屋にいた。夕方、電気もつけずに、ポツンと床の上に座っていてね。その後ろ姿を見たとき、僕は決して、「父のことは口にすまい、もう二度と、母に心配はかけまい」と誓った。母を守ろうと思ったんだ。

僕は前も言ったけど、ほんとに、ボーっとしてたから。勉強だって、あんまり興味がなかったもんだから、適当にやってた。80点なんて取れれば、万々歳で。もう、うれしくてね。テストの回答を机の上に広げるんだけど、みんな点数のところは隠すんだ。

僕は、堂々と出してた。というか、気にしてなかったんだ。すると、先生がこう言った。

「ほら、見てごらんなさい。そんなにいい点数じゃないのに、こうして堂々と出してる人もいる。別に恥じることじゃない」ってね。誉められてるのか、けなされてるのか。当時の僕は、少し複雑だった。まー、いまになってみれば、先生も言い方を間違えたんだろうとは思うけどね。それくらい、天真爛漫というか、無頓着だったんだ。

でも、その出来事をきっかけに、僕は変わった。小学校5年生から、僕はおそらく別人になった。何か「いけないもの」を隠すかのようにね。そう、答案用紙の点数の部分を折るように。学校では、噂になった。うちの家業のこと、そして父と母のこともね。世間ってのは、興味本位で他人のあることないこと言うもんだと、子供心に学んだ。



戦わないと、生きていけない



それが僕が唯一見つけた道だった。悲しみを紛らわすために、ね。頑張るしかなかった。そうすれば、母が喜んでくれるってね。うちのことをけなす奴に対して、有無を言わせないくらいに強くなろうとした。勉強やスポーツができれば、何も言えなくなるからってね。さらに、性格的にも強くなっていった。小学生らしくはなかったと思う。実際、当時を知る友達は「小学生の中に大人がいるって思った」って言ったほどだから(笑)。小学校の高学年の頃には、高校生に間違えられたこともあった。制服を着てるのにね。それほどに、必死で「大人になろう」としていたんだ。しかも、強くて、物分かりのいい大人にね。



全然、そうじゃないのに。



ただ、そういう「ふり」をしていただけなんだ。父がいなくなったことは、本当は誰よりも悲しかったんだ。父のことは、大好きだったんだ、本当は。なのに、なんでこんなことにって。どうして、こんなことにならなきゃいけない? どうして、こんな不幸を味合わなければいけない? ほかの人は、お父さんも、お母さんもいるじゃないか! なのに、どうして僕にはいない? いや、いなくならなきゃいけないんだ! あんなに幸せだったじゃないか…、あんなにみんな笑顔だったじゃないか…。なのに、どうして…??



当たり前にあったものが、消えてしまったんだ。

当たり前に思っていたものが、一夜にして、消えてしまったんだ。

僕がこの家に生まれたから? もしかして、僕のせい? 僕が生まれてきたから?



そんなふうに思ったこともあった。というか、ずいぶん、大人になるまでそう思っていた。ある占い師に、そんなようなことを言われたこともあったから。それも、僕がそういうふうに聞いたんだと思う。人間ってのは弱いもので、他人の言葉を自分に都合よく鵜呑みにすることで、不幸の支えにしようとするんだ。ただ、その状況を頭で納得したいがためにね。そうすれば楽になれると思ってる。

何か、何でもいいから「答え」になるものを探すんだ。ますます、僕のなかで不確かな思い込みが芽生えた。僕は何もかも破壊する人間なんだって。そういう星のもとに生まれた人間なんだって。家族の幸せを破壊するように、そんな運命(さだめ)のもとに生まれてきた、悪魔なんだって。

ただ…、それに納得していたわけじゃない。だから、いくらでも考えた。夜通し、考えたことも度々あった。考えても、考えても、考えても、答えは見つからなかったけどね。

ただ、僕にできることといえば、頑張ることだけだった。戦うことだけだった。自分の弱さと。自分のなかの悪魔と!

でも、自分の弱さを否定するばするほど、他人の弱さが許せなくなるんだ。他人にも同じものを求めてしまう。軽蔑するようになるんだ。そして、どんどん、心は閉ざされていく。気付かないうちにね。息ができないほどにね。息がどんどん浅くなっていく。

僕は前に進むことしか考えていなかった。前に! 前に! 前に! 前に!!!!

殺せ、殺せ、自分のなかの弱いものは全部殺してしまえ!!!!

そうやって僕は何を目指している? 誰よりも秀でることを? いや、違う。誰よりも褒められることを? いや、違う。そうじゃないんだ、そうじゃないんだ。僕が求めているものは? 僕は何を求めてる!???

分からない、分からない、分からないんだ! ただ僕を支配する「怒り」だけが猛々しく唸りを上げている。「怒り」こそが、僕であり、僕の生きる術だ。それがなければ頑張れない。だって、僕は悪魔だから。



でも、もう無理だ…、無理なんだ…。



恋もしたさ。この「怒り」を鎮めてくれるような相手を探した。僕は本当に人を好きになったことなんか、なかったんだ。ただ、自分を癒してくれる相手ならよかったんだ。相手を利用することしか考えていなかった。そんな僕なのに大事にしてくれる人がいた。だけど、僕はそれさえも大事にできなかったんだ…。

そうやって自分を責めていた。自分を責め、世間を、母を、兄を、他人を、すべてを責めていた。



いや…。「母を守る」なんて嘘だった。守りたかったのは、自分のプライドだった。僕は嘘つきだ。史上最強の嘘つきだ。それを証拠に、母を憎んでいた。母のために、母に心配をかけまい、母がいいようにと思いながら、どこかで母を憎んでいたじゃないか。母が父を悪く言うたびに、本当は自分の半分をけなされたようで傷ついていたじゃないか。なのに、それを悟られまいとして。大嘘つきだ。自分の幸せを奪った母が、ただ憎かっただけじゃないか。自分の半分をけなす母が、本当は大嫌いだったじゃないか! 母が、父が、兄が、世間が憎かっただけじゃないか! 本当はそうなのに、その醜い自分を見ないで、いいかっこうしてただけなんだ。

恋にしたってそうさ。大事にしてくれたから、その相手に罪悪感をもっているだけじゃないか。罪悪感っていう殻で、自分を守ろうとしただけじゃないか…。

父にしたって、最期の電話での会話を悔やんでいるけど、それだって自分がどう思われたかを気にしているだけじゃないか。ただ、自分を守りたかっただけじゃないか…。

自分がこうなったのは、全部、だれかのせい、世間のせい、挙句の果てに自分のせい、そうやって逃げてるズルくて、弱くて、卑怯なやつだってことを認めたくなかっただけじゃないか。







違う、違うんだ。本当は、違うんだ…。



本当は、本当は、そんな自分を、すべて許したかったんだ…、愛したかったんだ。それでいいって、許して、愛したかったんだ。ただ、愛したかったんだ…。だけど、僕は心を閉ざして、愛が何かさえ、許すことさえ、もう分からなくなっていた。何もかも、分からなくなっていたんだ。

僕は、僕が許せなかったんだ。許せずにいたんだ。許したくなかったんだ…。いや、見たくなかったんだ…。

待って…。



僕は、僕を許せない…?



どういうこと? 僕は、僕を許せないって…。



僕って何?



僕は、もう少し先で、もっともっと本当に泣けることになるんだけど。それは、また。























「人は、人である限り、人を許すことはできない」























 奇(ふ)しぎ




僕は、小さい頃から、不思議な体験をしていた。それは、この世界の「現実」では説明がつかないようなことで。だから、周囲の人には絶対に口にはしなかった。「頭がおかしい」と思われること、それが一番の恐怖だったから。僕は、世間的に「まとも」でありたかったんだ。



当時を知る友人は、

「ある程度分かる人にも、絶対に口を割らないよね」

なんて感心してたほどで(笑)。それほどに、慎重だったんだ。というか、不思議話で盛り上がるなんてことは、どうでもよかったんだ、正直。そうした話をおもしろ、おかしく扱うのも嫌だった。



それは大人になるまで続き、いつしか「気のせい」、「絶対にありえない」、「そんなことはない」と、その経験をすべて流していた。ダメ、ダメ、まともに生きなきゃって。いま思えば、「まとも」ってのは世間の大多数に合わせたものだったんだけど。「まとも」じゃなきゃいけないのに、体感は残っている。どうしようもなく。



当時の僕は、アンバランスだったんだ、とても。それに、そんな不思議を喜んで話すほど、僕は単純にはできていなかった。



僕が掴みたいのは、もっと違うものだと感じていた。もっと、芯にあるもの。



いまとなっては、それは不思議でもなんでもないことは理解できるんだけど。



夢のなかで手術を受けたのも、そのうちのひとつで。何か肉体の配線を変えているような感じでね。でも、まったく怖くなかったんだ。鮮明に覚えているほどで。いまとなっては、それが何だかも、もう知っているというか、分かっているんだけど。それは20代の後半のことだったけど。そのあとに起こることに、すべては繋がっていた。



いろんな不思議な体験は、もう数知れずあるんだけど、そのうちのひとつ。僕だけじゃなく、2人して同時っていうのがあったから、それを紹介しようかな。もう、それはそれは2人して大笑いした体験なんだけど。



もう20年ほど前のことになるだろうか。互いに愚痴のオンパレードなんてことを。電話口で。いま僕は友人と一緒にいて愚痴を言うことはない。人との関係のなかで、そうした話でつながりを感じることに興味がなくなったからだと思う。

互いに言い尽くした頃、友人が

「ねぇ、こんなこと言ってても拉致開かないから、エンジェルカード、引いてよ」

あまり気が進まないものの、その言葉に促されて、小さな缶に入ったカードを一枚引いた。読み上げたとき。



それは起こった。



急に、場の空気が変わった。一瞬にして。パキーンッと、まるで何かが介在したかのように。場の空気が一変した。距離が相当離れているにもかかわらず、同じことを感じた。



「何、いまの?」



その後、2人して大笑いをしたんだ。

それまでの自分がおかしくて、笑えてしまったんだ。おなかの底からおかしくて、おかしくて、今度は2人して爆笑。なんてことで、悩んでいたんだろうって。きっと大天使ワラエルってやつが、「この愚か者め!」ってな感じで、あまりのバカさ加減に業を煮やして、思わず介入してしまったのかもしれない。なんて、ね。

そんな体験をしたあとも、僕は疑い深くて。証明できないものは、信じない。それが僕だった。

当時の僕は、いま以上に確かなものが欲しかった。揺ぎ無いものが。もう否定しようもないものが。そうじゃなきゃ、僕は信じない。信じないから! って。誰に言ってるんだか分からないけど、本当に頑固者だと思う。だけど、たいていの人がそうだと思うんだ。

僕の奥底では、「何か」が、いつもうづいていた。イライラしていた。相変わらず、印象的な夢は頻繁に見ていたんだ。





あまり人には話したことがないけど、少し書こうと思う。



白い光線のなか、大きなクリスタルの柱が両サイドに並ぶ美しい回廊を歩いている。

見たこともない、巨大な水晶の柱だ。 クリスタルの上部には、赤や緑、黄、青など、美しい色の石がはめこまれている。

僕は、どこか違う場所にいるみたいだ。

いつしか地下へと続く階段の踊り場に立っているようだった。



誰もいない。ここはさらに静かだ…。とても静かだ…。



まるで閉鎖された空間のように。音の気配がない。

暗くて長い階段を下りていくと、丸いテーブルの上に美しい深いブルーの石が輝いている。



それは厳重に管理でもされているかのように、高性能の機械装置の上に丸いカプセルが置かれ、石はその中に入れられ、宙に浮いていた。 安らぐ、それでいて強い光を放っている。



目が覚めてもなお、その夢は僕のなかにあった。簡単にしばらくしたら消え去るものじゃなく、印象的な夢のひとつとして、僕のなかに残ったんだ。



その場は本当に美しく、安らかで。そのままその世界にいたいとさえ、思ったほどで。あまりにも美しすぎたから。そんな世界が本当にあるんだろうか、あるなら、そこに行きたいと願った。

そう、当時の僕は、何も信じられずにいたから。僕は何を信じていいのかさえ、分からず。いつも探していた。誰を信じればいい? 何を信じればいい?

僕は信じたい。

だけど、僕は何を信じればいい?



僕は揺るぎないものが欲しい。「不思議だね」って、あっさり片づけられるようなものは欲しくないんだ。そうじゃなきゃ、生きられない。それをつかまなければ、僕は生きていけないんだ。何をおいても、何をしても、それがなければ、僕は生きることさえできない。それは本当に、僕にとっては何よりも大事なことで。



それは、心の叫びだったんだ。



















ねぇ 僕の固いこころの扉開ける

鍵を ちょうだい

ああ… でもキミもボロボロなんだね…















 独り・踊る




以前、少しタンゴを習ったことがあった。そのとき、僕はいろんなことを知った。踊りっていうのは、奥が深いなーってね。いまはね、特にタンゴに興味はないんだけど。当時もそうだったんだけど、なんだか流れで習うことになってしまったんだ。

タンゴはペアで踊るんだけど。まだ何も知らない頃は、女性は男性にもたれかかっているもんだとばかり思っていた。だけど、習い始めて驚いた。女性は男性が離れても、ちゃんと立ってられるんだ。しかも、男性のリードにスムーズに合わせなくちゃいけない。それも感覚的にね。

考えてちゃ、遅れてしまう。相手の動きを考えて予測することもできない。先生が動く方向を瞬間で察知して、からだを委ねるんだ。委ねるってのは、もたれかかるって意味じゃないってことも、そのとき知った。

個人レッスンをしてもらっていたけど、趣味で習っている割には、ハードな授業だったと思う。何度か、本気で泣きそうになったからね。ほんとに厳しく教えてくれたというか。

いつも僕は怒られていた。

「感じて、感じて! もっと感じて!」

ってね。そう言われても、最初はどうしてもステップばかり気にしてしまうんだ。

「タンゴはステップじゃない! もっと僕を見て! 僕を感じて!」

って、先生に言われるわけだけど。

感じよう、感じようとすると、今度は頭に入ってしまう。で、また先生に怒られる。で、最初から、やり直し。

「れい子は、シャイだ」
ってのが、先生のいつもの口癖で。あんまり日本語が上手じゃないからってのもあるけど、もっとオープンになれって意味だったんだなって。当時の僕は、

(そんなこと言われても…)
ってな感じで、どうしていいのか分からなかった。だけど、それって、いまとなっては笑えるんだけど。あまりにも単純なことでね。信頼の位置にいないから、どうしても頭で考えてしまうんだ。古い頭でね。予測しようとしてしまう。



信頼の位置にいないのに、どうして相手にすべてを委ねられる?



信頼の状態にないのに、どうやって相手の動きを感じられる?



信頼できないのに、どうやってオープンになれる?



よく「神に委ねる」って言うんだけど。神ってのは自分で。本当はね。わたしで、すべてで、光で。それも、またいずれ話そうと思う。僕が体験したことをね。まず、自分を信頼することが核なんだって痛感したよ。自分っていうのは、すべてなんだけど。当時の僕にとっては、難しいことで。そうしなきゃ、僕はタンゴも踊れないってね。

僕は、まだ恐れていたんだ。それは踊ることで、露わになったわけだけど。

だから、先生との踊りは、なんだか、うまくいったり、いかなかったりで。うまくいったときは、本当にハーモニーなんだ。まるで先生と一体化したかのように、気持ちよく踊れる。何も考えなくても。いや、古い考えの中にいないからなんだよね。

だけど、すぐに古い頭に入ってしまって、途端に、

「感じて! 見て!」

って檄が飛んでくる。でも。

その先生、ほんと素敵な人で。スタジオに行くと、いつも一人で静かにギターなんか弾いててね。いつもは静かで、とても優しいというか。さり気なく飲み物を用意してくれたり、ファッションを褒めてくれたりする。だけど、踊りのレッスンになると途端に怖い。っていうか、なんであんなに厳しかったわけ? それも僕が選んだことだね。

今度また、先生と踊ってみたい。いまの僕は、どんなふうに先生と踊るんだろう。ちょっと、楽しいかもしれない。けど、やっぱり、僕はシャイかもしれないけど(笑)。



人間は誰かを好きになると、苦しみもついてくる。それは、自分が見なきゃいけないものを、目の前に突きつけられるからなんだ。それは普段、出会う人もそうなんだけど。誰かを好きになるっていうのは、とても濃いレッスンだったりするよね。

そして、僕も。僕もね、ちゃんと人を好きになったんだ。この間は、「人を好きになったことなんかなかった」って書いたけど。だけど、僕はまだやらなきゃいけないことがあった。僕は、まず自分と向き合うこと、自分のすべてを好きになることが先だった。

そうじゃなきゃ、ダメだったんだ。それが僕が選んだことだったんだ。そうじゃなきゃ、僕は誰も、何も、本当の意味で好きになることができずにいたから。何も、何も選ばない、選べない人生を送ってしまうことになってしまっていたと思うんだ。



タンゴで習ったことは、まず独りで立つことだった。独りで立つってね、孤独になることじゃないんだ。全然、違うんだ。それこそが、すべてと調和した状態なんだけど。当時の僕には、まだそれがよく分かっていなかったんだ。ほんとにね、人間をやってると、すごく頭の世界に没頭してしまうものだね。催眠って言ったりするんだけど、それはそれは、眠っているんだね。眠り姫のようにね。



当時、僕を好きになってくれた人に、僕は心から、いまでも感謝…、感謝っていう言葉を使っていいのか…、なんだか感謝は、僕にとって、とても繊細で、大事なもので。感謝や愛、信頼…、そのすべては、とても繊細で、大事で、古い地球の概念を超えたものだよね。分かりやすく言うなら、愛している。だけど、それは求めあう愛じゃなく。もっと違うものなんだ。もっと、違うものなんだ。

あんなに荒(すさ)んでいた僕に、キミのように素敵な人が現れるなんて奇跡だと思うよ、いまでも。キミを始めて見つけたとき、僕はいいようのないものを感じたんだ。理屈じゃなく、キミに強烈に惹かれた。いや、惹かれたなんてもんじゃなく、もう自然にキミを求めた。キミは、それほどに僕に言葉じゃなく、すべてで、いろんなことを伝えてくれた。

当時は、いまのようには分からなかった。なぜ、キミがいつもそうしていられるのかが。キミはいつも本当に楽しそうだったから。何をしててもね。笑ってなくても、キミがそうだってことくらい、当時の僕にも分っていた。キミが普通じゃないってこともね。そして、キミはキミのしたいことに純粋に力を注いでいた。本当に好きなことに。

そんなキミが僕は、とても眩しくて、不思議でね。

ある日なんか、キミが窓辺で立っている姿を見て、まるで天使がそこにいるのかと錯覚したことさえあった。それほどに、キミは美しかったんだ。

キミの純粋な存在は、僕にとっては、かけがえのないものだった。だけど、僕はキミの力なしに歩き出さなきゃいけなかった。だから、離れることになったんだね。あまり、うまい離れ方じゃなかったとは思うけど。キミはいつだって、小さな自分のことじゃなく、高い位置で僕のことを考えていた。最期の言葉もそうだったね。

なぜ強引にでも引き止めないのか、それが僕は不満だった。本当に、単なる子供で、わがままな奴だったと思う。いつだって、自分じゃなく、相手に結論を出させようとしていたんだ、僕は。怖かったんだ。自分の選択さえできないほどに。いや、ただ逃げていただけなんだ。失敗するのが怖くてね、責任を取るのが、それを見るのが怖くて。

いま、僕はキミを以前よりも、近くに感じてる。あのときのキミがどんな思いだったかってことも…。僕は、自分のことしか考えられない人間だった。いや、自分のことさえ分からなくて、小さな世界に閉じこもっていたんだ。

いま、こうしていまでも、キミをここに感じられる。そして、キミが残した形なきもの、形あるものが、いまでも僕をハッとさせることがあるんだ。

そのたびに、僕は微笑むんだけど。

キミは、僕がきっと分かるときがくることを知っていたんだね。



恋は、人を成長させてくれる。僕は、そう思うんだ。

相手に向き合うことは、自分に向き合うことだから。ちゃんと向き合えたなら、誤魔化しも、嘘も、すべてが昇華されていく。喧嘩することも、意見が食い違うことも、価値観が違うって思うこともすべて、そのために起こっていること。そして、本当の愛を知っていくんだね。

ああ、うまく言葉にできないけど、伝わってるだろうか。


























 もうひとつの夢・一冊の本




さあ、今夜は約束通り、もうひとつの夢へキミを招待しよう。















その日、僕はいつもと変わらぬ一日を過ごしていた。まだ僕は、本当の僕じゃないまま生きていた。まだまだ悩みや苦しみの中に埋もれて生きるのが、僕の日常で。相変わらず、日々、なんとなく仕事をしながら、僕の未来はどうなるんだろう? なんて考えていたんだ。

「楽しむ」なんてことは、僕にとってわけのわからないことだった。おかしいと思うかもしれないね。楽しむことが分からないなんて。だけど人間としての一瞬の楽しみの裏には、必ず苦しみが存在している。人間として生きている限り、それはついて回るものなんだ。それを僕は少なくとも感じていた。だから、人間としての楽しみは苦痛でしかなかったんだ。僕は心底楽しむことができずにいたから。

だから、よりエキサイティングなことを求めていた時期もあった。そうすれば一瞬は忘れられるような気がしてね。苦しみを。そんなわけないんだけど。もう、そういうことで誤魔化すのも限界にきていた。

答えは、依然として見つからないままに。

僕は夜、いつものように眠りについた。



気づけば、夢の中。僕はある一冊の本を読んでいた。

そこがどこだかは分からない。ただ、部屋のような空間じゃなく、何もないような場所だったと思う。けれども安らぐ、美しいエネルギーに包まれていた気がする。

それは本だったと思うんだ。まるでフラッシュのように光の文字のようなものがパンッ、パンッ、パンッと、次々に僕の目の前に現れては消えていく。面白いように。



ひと通り読み終えたとき、僕は、いいようのない爽快感に包まれた。



(ああ、生きるとは、こんなにも簡単なことだったんだ…!)



歓喜した。そこに僕が求めていたものがあったんだ。







目が覚めたときも、僕はまだ夢のなかの状態で。

深い安堵と、歓びは続いていた。ただ、うれしかった。



だけど…、覚えていたのは、

「生きるとは、こんなにも簡単だったんだ」

たった、それだけだったんだ。



どんなに思い出そうとしても、思い出せなかった。だけど、その頃の僕は、案外、気楽になっていてね。当時、僕は36歳くらいだったと思う。大事な人とのお付き合いが終わったあとで。一人で自分と一緒にいることが多くなっていたせいなのか、案外、落ち着いていた。案外ね(笑)。一番、ひどいときから比べれば、ずいぶん、ましになっていた。

だから、それほど、その夢に執着もしていなかったんだ。まー、仕方ないって感じでね。

ただ、その夢が僕にとって、とても大事だってことは分かっていた。きっと分かるときがくるのを信じた。なぜか、信じられたんだ。あれほど疑い深かった僕が、すんなり信じるなんて、稀なことでね。

いまになって思えば、その当時のまだ古い思考に浸かった頭では、その内容を理解することは無理だったんだ。




それはさらに進化しているといってもいい。ただ、ひとつ贈りたいものがあるんだ。当時の僕に。思い出そうとしている僕に。この言葉を。





火と水 すなわち霊と人間は

第3のものの中で完成し

ここに新たな生命 誕生す

これをもって 錬金は自然に行われる

永遠に 循環す






もうすぐ、キミは僕と一緒になるよ。もうすぐだ。









投げた石 

もうどこまで沈んだんだろう

ぷくぷくぷく…
























 突然の祝福!




僕は ずっとキミを 呼んでいた

生まれてから ずっとキミを探していた

僕は ずっとキミに焦がれていた

僕はキミと一緒になることを



キミがここに来てくれるのを ずっと待っていた

泣き叫びたいほどに どんなことをしても どんなことより

僕がキミを どんなに焦がれていたか

知っているだろうか



キミは それを知っているはずだ

キミは 僕のすべてを見続けてきたんだから



2008年7月9日。その日のことを僕は一生忘れないだろう。いまでも鮮明に覚えている。あの不思議な夢から、時は経過していた。当時の僕の様子を知る人もいるね。このブログを書き始めたのも2008年5月からだから。そのときのタイトルは「ちんぴら天使」だった。いろいろ変遷していたけどね。かなりテキトーにタイトルを変えていたから。

友人に「ほんっと、テキトーなんだから」って笑われてたけどね。

僕としては、けっこー真剣なつもりだったんだけど。確かに、そう言われれば、そうかもしれない。正直言えば、まだ自分のなかで定着するようなタイトルが見つかっていなかったんだ。

で、とりあえず、「ちんぴら天使」。

いまはブログを引越しているから、当時の記事は残っていないんだけど。それは僕と、キミの記憶の中にもいまも生き続けているはず(?) かなり赤裸々な内容だったと思うし、何しろリアルタイムでいろんな出来事が起こっていたから。父の死も、そのひとつだった。

僕の中で、父との関係は大きなもののひとつだったから。父を本当の意味で許したとき、僕は号泣した。泣いて、泣いて、泣いて、尋常じゃない泣き方だった。幸い、一人で存分に泣くことができたんだけどね。人ってね、いろんなことを勘違いして生きているもので。自分の価値観で相手を、知らず知らずに判断してしまうんだ。ぜんぶ、この3次元で自分が生み出した自分で、結局は、ぜんぶ、自分なのにね。

まるで、雪崩のように、頑なな何かが崩壊した瞬間だった。それはまた別の機会に話そうと思うんだ。



当時、僕はタンゴを習っていた。それは、もう話したね。というのも、ある知人の誕生日パーティがあったからなんだ。それを目指してレッスンしていたわけなんだけど。そのパーティに向けて、ドレスや靴を購入したり、ネイルをしたり。忙しく買い物や身づくろい? をしながら。暑い夏だったのを覚えている。

そして、もうひとつ。僕のなかでやっていたことがあった。それは「感謝」だった。感謝できることを見つけて、毎日のようにしていた。無理にしていたわけじゃなく、し始めると楽しくてね。

で、いまでも「感謝」は僕にとって大事なものなんだ。「感謝」は「調和」そのものだから。



話を戻そう。僕が本当の僕を強烈に体験した日の4日前に。



その日、僕は電車で移動していた。日比谷線に乗っていたとき、突然、ある絵が浮かんだんだ。

(ああ、こういうことだったのか…!!!)

と、夢のなかのひとつが現れたんだ。そのとき、僕は小躍りしたいくらいでね。それまで謎のベールに包まれたいたものが、僕のなかでストンッと腑に落ちたんだ。そのときも歓びだったんだけど、それはまだ小さな歓びだった。



2008年7月9日。お昼過ぎ。ちょっとした昼食を買いに行こうと、近所のスーパーまで出かけた。その途中で、それは突然、起こったんだ。

それは本当に突然で。まるで光の粉が舞い降りてきたようで、多くの過去が走馬灯のように…。それは一瞬だったんだ。一瞬だけど、ものすごく膨大なものだった。どう表現していいのか分からない。そう、僕のそのとき感じたことを書こう。

(ああ、僕はなんという壮大なドラマを演じてきたんだろう…!)

次の瞬間、いつも見ている景色がまるで違うものに見えた。銀行に向かう女性、宅急便のお兄さん、木々…、そのすべてが輝いて見えた。とてつもない歓びだった。もうそうとしか言いようがない。

その後も、電車に乗っていることに驚いてしまうんだ。感動してしまうんだ。

(電車に乗ってる! しかも、この電車、動いてる!)

ってね(笑)。もー、うれしくてね。バカみたいだけど、本当にうれしくて、うれしくて。

ちなみに、電車はそれまで何度も乗ってる。お初じゃないのに、すごい、すごい!! って感じで、もー、うれしすぎてね(笑)。バカみたいなんだけど。でも、僕にとっては、初めてのことだったんだ。本当の僕にとっては! 

その夜、パーティがあったんだけど。もー、楽しくて、うれしくて、仕方がない。タンゴも、もちろん踊った。うまく踊ろうなんて頭はなくて、もー、その場にいること、踊っていること、誰かのぬくもりに触れられること、そのすべてがうれしくて。飲めないシャンパンをしこたま飲んで、ほとんど酔っ払い状態。といっても泥酔まではしていない。上機嫌だったんだ。ほとんど、笑いっぱなし。

目が見えることが、誰かと話せることが、からだが動くことが、肌の温もりを感じられることが、耳が聞こえることが、そのすべてが、こんなにもうれしいことだなんて思わなかったよ。



ああ、僕は生きてる!!!

ああ、僕はここで生きてる!!!

って叫びたいくらいに、うれしくてね。



知人の誕生日を祝うために来たんだけど、一緒に自分の誕生日もって感じだったかもしれない(笑)。すみません、便乗させてもらいました。ほんとに、すべてがベストタイミングで進んでいくものだなと思う。酔っ払った僕は、友達の車で送ってもらうことになったんだけど。友達の車の前に止めてあった車のナンバーは「1111」。

ああ、なんて素敵なメッセージを置いたんだろうって、あまりにもうれしくてね。思わず、カメラを構えて撮影してしまった一枚がこれなんだ(笑)。ちゃんと立ってるから、泥酔じゃないことは分かってもらえるかな。影で。

それに。それほど、僕はリアリティのない生活をしていたんだ。ああ、それがリアルだって、いまは分かるんだけど。当時は何が起こったか、あんまり分かっていなくてね。ただ、ただ、うれしくて。

オードリー・ヘップバーンの「マイフェアレディ」の中の挿入歌「I Could Have Danced All Night 」を知ってるだろうか。花売り娘が美しい発音を身につけて、あまりにもうれしくて、寝付けずに踊り出すんだ。まるで、本当にそんな感じで。

僕はずっと魂がほとんど入っていなかったから。それまで見たことあるものが、こんなにも新鮮に思えるなんて。いつも見ている商店街に行けば、

(これが商店街!!!)

なんて感動して、見るもの、見るものが新鮮で、感動で、うれしくて。ああ、歩いてる。商店街を歩いてる!!! いろんなものに触れられることが、もう、うれしくて、うれしくて。

毎日が祝福とともに目覚める感じで。起きると、息をしていることがうれしいんだ。ああ、今日もカラダがある。歯を磨いて、朝食を食べて、誰かと話をして、雨が降ってるのがうれしくて、雨を感じたくてビショ濡れになったり…、そのすべてがうれしくて、うれしくて。

感謝がとめどなく溢れてくるんだ。生きていることに。すべてに。

そして、そのとき。僕はもうひとつハッキリと確信したんだ。目に見えない多くの存在をね。その10日間ほどは、いつも僕と一緒にいた。ものすごく身近に感じていた。お風呂に入るときも、いつもね。

だけど、それは10日ほどで過ぎ去った。お別れがきたとき、僕は分かったんだ。それも当時のブログに書いたと思う。僕には、これから本格的にやらなきゃいけないことがあった。



それからが、僕が本当の僕になるための日々だったんだ。
























 せめぎ合い




光を観た…



僕は光を観たんだ…



すべてが輝いていた



そして 僕はとてもうれしかった



あの光は…



あの光は…



何?







ねぇ、世の中を観てごらんよ。


毎日、毎日、どんなニュースを目にする?


戦争が起こっている、人と人が殺し合う、人と人が嫌い合う。それは遠い国の話じゃなくて、身近でも起きていることだよね。


キミだって、毎日、毎日、人や、何かを嫌ってるでしょ?


遠いところで起きていることじゃないよね。


ああ、それは当たり前のことだよね。だって、地球ってとこはそうだもんね。生まれたときから、そうだもんね。


そんな出来事は当たり前に見てきている。家庭の中でもね。


ああ、でも、キミは一切悪くないよ。キミは悪くないさ。あいつが悪いんだよ! あいつがね。親が悪いんだよ、親がね。世間が悪いんだよ! 世間がね。だって、キミにひとつも悪いとこなんかないもの。キミは、いい子だもん。とってもね。


そんないい子のキミは、毎日、毎日、どんな出来事を目にする?


ねぇ、キミの世界はどんな世界なの?


隣りの人が怒っている? 旦那さんが不機嫌だったり? 友達と喧嘩したり? お父さんが嫌い? お母さんが嫌い?


キミが不幸なのは、みんなのせいだよね。キミの気分を害するのは、キミの気分をよくするのも、いつも外の世界だよ。外の世界のせいだよ。おっと…、キミのせいかな? いい子だもんね、自分のせいかも? とか思ったりするよね。


でもさ、キミはいい子だもん。キミにはひとつも悪いとこなんかないんだよ? だから、キミのせいなんかじゃないよ。当たり前だよ、誰かのせいにもしたくなるよ。それでいいんだよ、だってそれしか方法がないもんね。誰のせいだっていうの? みんなのせいだよ。キミのせいなんかじゃないよ。


だって、キミは、とってもいい子だもん。


いい子だから、世の中が悪く見えるよね。とっても、いい子だから。




世の中は欺瞞に満ちてるよね。


悪魔がいっぱいだよ。かわいそうな人だらけだよ。悪魔に憑りつかれて。


タロットカードの「悪魔のカード」、知ってる? 鎖で繋がれた男女が、悪魔に支配されてんだ。今度、興味があったらみてみてよ。でもさ、その鎖、外れてるんだよ。なのに、その男女はそこから抜け出そうとしないんだ。


幸せなんだね、それが。悪魔に魅入られているのが、幸せなんだ。悪魔に支配されているのがね。


世間っていう悪魔に、誰かっていう悪魔に、知らない存在に!


アハハハ! 面白いよね、本当に。


ああ、かわいそう、かわいそう、かわいそう! ああ、ほんとに、かわいそうだよね、あの人も、この人も、あそこの人も! かわいそう、かわいそう、本当にかわいそう!


本当に、かわいそうな人だらけだよね。かわいそうだよ、だって、そうでしょう? 本当を知らないんだもん。本当の自分を知らないんだよ? いつも外側に神を求めてさ。祈ってさ。祈るんだよ? 神に! 見知らぬ神にだよ? 「どうか戦いのない平和な世界になりますように」ってね。大きなお世話だよ。自分の世界も平和じゃないくせに、よくそんなこと祈れるよね(笑)。自分の世界に責任ももてないくせに…、ああ、だからか。あ、もっと個人的なことを祈るやつもいるね。自分はなーんにもしないでね。見当外れのやさしさでさ、日々、思いやりとやらを発揮してんだよ。偽物のね。愛さえ分からないんだからさ。そういう奴は、祈るだけさ。仕方ないよ。教会だって本当のことを教えないんだよ? 


あ、教えちゃまずいさ。本当のことはさ、教えちゃまずいんだよ…。黙ってないとね。とんでもないことになってしまうよ。


せっかく支配してきたのにさ。内緒にしよう。内緒、ナイショ…。


そう、人類はさ、かわいそうに決まってるよ。決まってるんだよ、それでいいんだよ。それでこそ、人間なんだから。


人間はさ。生まれただけで、かわいそうなんだよ。だから生まれたときに泣くんだよ、「オギャー!」ってね。自分のこれからの運命を察知してね。


キリストだって、うなだれて十字架にかかってるじゃないか(笑)。誰が考えたか知らないけどさ。まったくセンスないね。ああ、でもさ、考えそうなことだよ。ああして、まるで人類の生をそのまま象徴しているかのようにね。罪を全部背負って生きるんだよ! 重荷を背負ってね。人生ってのは、そういうものだからさ。


そういう経験をしにきてんだよ、みんなね。みーーーーんな、ね。


人生ってそういうものだよって、思うじゃないか? アハハハ!


幸せそうなふりをして、そういうふりをして生きるのが、せめてもの救いだよね。


一瞬の快楽を求めてさ。


セックスもいいよね、美味しいものをおなかいっぱい食べるのもいいよね、ジャンクフードもいいよね。人の気を惹くのもいいよね。


それくらいないとさ、やってらんないよ! だって、苦しみばかりじゃ、生きていけないさ。たまに、ご褒美がないとね。快楽もないとね。


それにさ…、地球ってとこは、何が起こるか分からない。天災だっていつくるか分からないんだよ?


怖いよね、ひどいよね、世の中ってとこは。


人間が怖いよね。


人間って、ものすごくいいこともできるけど、悪いことだって平気でできちゃうんだもん。


だけどさ、キミはそんな人を「かわいそう」だと思うんだね。だって、キミはいい子だもんね。いや、キミはいい子だから、まるで聖母マリアのように「その、かわいそうな人たち」を観るんだね。哀れみの眼で。癒してあげようと思うんだね。


いい子だ…。怖いのに、癒せるんだね、救えるんだね、勇気あるよ、勇敢だよ、キミは。すごい能力だね。天才だよ、やっぱ、キミって。




ねぇ、キミの世界は、どんな世界?


キミが観ている世界は、悪魔たちが刀を振るう世界? 肉体だけじゃなくて、心にも刀を振るうんだ。


だけど、キミはそんなことしないよね。できるはずないさぁ。だって、キミはいい子だもん。悪口なんか一切言わないさ。思いもしないさ。人に悪意があるなんて信じられないよね。そんな人は、人間じゃないよね。


悪魔だよ! そう! 悪魔! 悪魔に憑りつかれたんだよ! みんなね。自分さえ、よきゃいいんだよ。自分さえね。なのにさ、自分のことさえ、自分で決めることができないんだからさ(笑)。自分が分からないんだよ? 


いい子のキミもいるっていうのに…。なんで、世の中はそうなんだろうね。キミは少数派なんだよ。かわいそうだけど。キミだけがいい子で、ここは悪魔の世界なんだよ。そうだよ。だって、キミはいい子だもん。


いい子ほど、住みずらいよね。


いい子なのに、苦しいよね。いっそのこと、悪いやつになってみればいいんじゃないかな? いい子に疲れたんなら、悪い子になればいいじゃないか。


そうしたら、キミの願いをかなえてあげてもいいさ。すべての願いをね。





悪魔の僕なら、願いをかなえてあげられるよ。願いをかなえるのは僕の仕事さ。悪魔の仕事さ。





ああ、でもキミは、いい子。本当に、いい子。まるで天使のようだ。








だけどさ…、








キミが悪魔だって、知ってた?








ふ…、ふふふ…、ふふふふふ…、あはははははは!








「僕は、悪魔なんかじゃない!」


嘘つき。キミは本当に嘘つきだね。まだ嘘をつくっていうのかい? 自分のこと、「ちんぴら天使」だって言ってたじゃないか。何をいまさら、いい子ぶるんだよ。


「僕は、悪魔なんかじゃない!」


あははは! キミは悪魔なんだよ? 知らなかったの? 自分だって、そうじゃないかって疑ってたじゃないか。


「違う! 僕は悪魔なんかじゃないんだ!」


じゃあ、キミはなんなの?


「…僕は…、僕は…」


ほーら、答えられないさ。キミは悪魔なんだってば。光を観たからって、「ちんぴら天使」は卒業なのかい? いきなり、いい子なのかい? ねぇ? キミってば、そんなにいい子なんだ。


ねぇ…? キミって、光を観たんだもんね。あの強烈な光を体験したんだからさ、ほら! 救いなよ! みんなをさ! かわいそうな人たちをさ!




「人を救うことなどできない…。救えるのは、その人自身しかいない」


嘘つき、嘘つき! あはははは! 嘘つきは泥棒の始まりだよ。エナジーヴァンパイアって知ってるでしょう? キミがそうだよ! アハハハ! いつだって、キミは自分の存在価値を証明しないと生きていけないんだ。そうだろ? 褒められないと生きていけないんだろう? 誰かに認められないと、世間に認められないと。愛されてるって確認しないと、いつも確認できないと不安で仕方ないんだろ? そうやって外側からエネルギーを惹かないと、生きていけないんだよ! 自分を保てないんだよ!


それが、キミなんだよ! さぁ! 認めろよ!


キミは自分を知らないんだよ。本当の自分をね。だから、僕が教えてあげようって言ってるんだよ。ご親切にね。こんな親切な奴もそうはいないさ。友達になろうよ。なんなら、家族でもいいさ。そしたら、いつも一緒にいられるじゃないか。もっと親密になろうよ。


僕はキミをいじめる人。キミは僕にいじめられる人。僕が加害者で、キミが被害者。こんな感じでどうかな? いいでしょう? それがこの世の仕組みだよ。それ以外、あり得ないんだってば。そういう関係性でしか、成り立たないんだってば! あははは! で、いいでしょう? 友達になろうよ、そういう関係性のさ。


どっちにしろ、キミには選べないんだからさ。「どっちか」でしか、選べないんだよ? あ、それさえも、キミにはできないね。キミは迷い人だもん。迷うよねー、どっちを選んでも地獄だもん! アハハハ! だからさ、僕がキミの代わりに、決めてあげるよ! 親切だろ? ほんとに、僕って親切だよ。


キミは光を観たなんて思ってるけど、すべて幻だよ。


あんなのは、幻。


僕が見せた幻だよ。


光なんか、この世に存在しないさ。


キミが観ている世界、その通りだよ。世界は。悪魔たちの世界なんだから。あはははは!


「違う! 僕は光を観たんだ!」


じゃあ、証拠を見せてよ。その光を見せてよ。いま、ここに見せてよ。


「……」


ほーら、それは嘘なんだよ。キミは嘘の光を観たんだよ。ふ…、ふふふふふ…、あははははは! あんな光に騙されるなんて、キミもバカだね。


「キミとは話したくない。立ち去れ!」


立ち去れ? 僕に命令できるのは、本当の僕だけさ。いまのキミには僕に命令することなど、できない。


「立ち去れ! 立ち去れ! 立ち去れ!」


あはははは! 面白いね。まったく効かないね。悪魔祓いのつもりかい? 十字架でもかかげてみるんだね。それとも聖水か? かけてみろよ! さぁ! 呪文でも唱えてみろよ! ふふふ…、アハハハハハ! 怖いふりでもしようか? ふふふ…、怖くもないね、屁でもないね。そういうのを「馬の耳に念仏」っていうんだよ。あ…! そうか、それはキミのことだね。いくら本当のことを聴いても、分からないんだからさ! あまりにもマインドにはまりこんでいる人間たちは、聴けないんだからさ! キミはそのままでいいんだよ、そのままで。あー、ほんとに面白いよ、人間って。


それにしてもさ、悪魔の僕を脅すって、キミも相当、面白いね。そういうのを身の程知らずっていうんだよ。何度言ったところで、僕に命令はできないよ。いまのキミではね。それとも、しっぽを巻いて逃げるかい? 逃げても、逃げても、僕はキミの目の前に現れ続けるけどね。ふふふふ。ねぇ…? 仲良くしようよ。加害者と被害者でさ。僕、加害者。キミ、被害者ね。キミのこと、気に入ってるんだからさ、これでも僕。これも愛情表現のひとつさ。


ところでさ、大天使ルシファー、キミは知ってる?


「……」


キミは、恐れているんだね。彼を。知ってるくせに、知らないふりをする。キミは、そういうとこ、あるよね。ああ、人間はみなそうだ。苦しいのに、苦しくないふりをする。悲しいのに、悲しくないふりをする。それを感じるのがいけないことだと思っているんだ。人間ってやつはね。闇を感じることを恐れるんだ。ポジティブシンキング! いいね。ドンチャン、ドンチャン! 騒がしいね。ドンチャン騒ぎで岩戸は開かぬ。ポジティブ! いいね! とてもね。そうそう、ネガティブシンキング! ってやつはないんだね。感じられないんだね、人間ってやつは。


(感じる…? 闇を感じる…?)


御多分に漏れず、いい子のキミもそうだよね。感じることが怖いんだ。だから感じないようにしてるんだ。愚かだね、本当にキミは愚かだよ。考えろ、考えろ! 自分が何ものであるか、考えろよ! その愚かな頭でさ! そのウイルスまみれの頭でさ! 自分のこと、賢いと思ってんだろ? 愚かなくせに…、ほんとに笑っちゃうよ(笑)。さぁ。考えて、答えを言ってみろよ!


「僕は…、いい子なんかじゃない…、いい子なんかじゃない…」


ようやく、悪魔だって認めるんだね。いい子じゃなきゃ、悪魔だ。あははは! そう、キミはルシファーなんだよ。やった、やった! キミは悪魔! そう、キミは言いなり。僕の、言いなり! 催眠成功! 簡単だよ、本当の自分を知らないやつに催眠かけるんなんてのは! アハハハ!




それが、大衆意識だよ。それが集合意識だよ。スピリチュアルでさえね。ああ、スピリチュアルなんてのは、見事な集合意識だね。アハハハハ! あー、面白い。あー、楽しいね。ほんとに、人形を扱うのは楽しいねー。本当の自分を知らない人間ほど、愚かなものはないね。ああ、ほとんどの人間がそうだけどね。何重にも、何重にも、催眠にかかってさ! もう、がんじがらめだよ! もう、解けないさ! どんどん、そうやって催眠にかかってくんだからさ! そうじゃなきゃ、面白くないだろ? それが人間ってやつなんだから! アハハハハ! 





(そうだ、あの空間だ…)








キ・ミは、悪・魔! 大天使ルシファーの弟子かもしれないよ。いいねー、いいねー、それもいいねー!





キミはいい子で、悪い子


ときどき普通の子


どのポジションも悪魔だ、天使だ!


アハハハ!


どのポジションにしようか? 今日は?


いい子? 悪い子? 普通の子?


どのポジションも窮屈だ 最悪で最高だね! 決めつけられてこその人生だよ! 決めつけてこその人生だよ!


誰かに、何かに、見えないものにね! 運命にね! 占いにね!


キミは女 キミは悪魔 キミは被害者 キミは黒! あー、楽しい!


十字架に磔にされたキリスト 人類の罪をぜーんぶ背負って うなだれてるキリスト!


おお、神よ! 栄光ある犠牲者!(加害者!)


催眠にかかったまま死ぬんだ! 死んだように生きるんだ!


それでまた何もかも忘れて 泣きながらオギャーッ! またまた深い催眠にかかったまま生きるんだ!


何度も何度もね! アハハハハ! だからバカだって言ってんだよ 人間はバカだって


バカは死んでも治りません! バカなまま また さらにバカになってやり直しー!


輪廻 輪廻! ずーっと回るよ ぐるぐるぐるぐるー!


幸せと不幸の繰り返しー! どうあっても地獄だ! 地獄だ! 一瞬天国ー! そしてまた地獄!


それが生きるってこと♪








(光の叡智は、すでにわたしの内に、わたしとともにある…)








「……、そうだよ。僕は悪魔だ」


認めるのか…? ようやく認めるのか!? アハハハハ! あー、おかしい!


「そうだよ、僕はルシファーだ。僕はずっと、僕のなかのルシファーを恐れていたんだ…」


……!? 


「キミは、僕だ。いま、僕は感動しているんだ、深くね。キミに出会えたことをね。僕はずっと自分の中の悪魔を怖がって観ないようにしてきたんだ。キミを感じないようにしてきたんだ。だけど、いま、キミを始めて感じられる。ちゃんとね…、いまようやく感じられるんだ…」





「僕は…、キミをいま、始めて感じているんだ。キミを…」





………。





「僕は、天使でもあり、悪魔でもある。そのどちらも経験した。すべては僕が生み出したものだ。キミっていう悪魔もね。


そう、僕はキミの創造主なんだ。キミだけじゃなく、すべてがそうだ。


そうだったね。キミの質問に答えよう。僕が何ものかをね。僕は神だ。僕が観た光は、神性の光だ。それは僕の内にずっとあったものだよ。誰の中にもある。いま、僕は、わたしが選ぶものが、わたし自身だということを知っている者だ。


そう、わたしはすでにわたしが選んでいるわたし自身を表現するもの…、いや、表現しているものだ。この肉体で、この存在すべてでね。


キミは消えるわけじゃない。わたしと一緒だ。常に。光に還ったキミは、常にわたしとともにある。


立ち去る必要などない。ようやく戻ってきたんだ。わたしの眼の前に現れてくれた。キミは、新たに光に還り、わたしとともにあるんだ。永遠に」









「ありがとう」












感じる。



わたしが感じる。



わたしが、感じる。



「わたしが」、感じる。



人間として生きた日々、どれほど、それを分かっていただろうか。感じるということを、感じるということの素晴らしさを。


それについては、次の夜に。また。






主(神性)の光だけが 


キミの世界に現れたすべてを


光に還すことができる




























 変化するカラダ








帰還場所が違えば



おのずと



結果も違うものになる







前の章では、僕の分離した頭のなかのドラマの話をした。それについて、もう少し話を進めよう。



最初の人間、アダムとアイシス(イブ)は、知恵の実を食べて、楽園を追い出された。


蛇にそそのかされてね。


そして、自身も、人間たちは、蛇のように這いつくばって生きるようになった。


人間たちは、本当の選択などできない。


地を這いつくばった人間に、選択することなどできないんだ。


それが、「運命」なんだ。


それを、「運命」と呼ぶんだね。








つづく







































家に帰りたい



はじまり







         


    




石を投げたんだ



「私」の現実のなかで



ある夢



僕って何?










          

奇(ふ)しぎ



独り・踊る



もうひとつの夢・一冊の本



突然の祝福!
















せめぎ合い



変化するカラダ



これがカミ!




 



人間と神性の統合



わたしは生命(光)の花














illust 提供

―Thank you for all